例えるならステーキ

 久々に素敵な本に出合えたので紹介。


深海のYrr 〈上〉  (ハヤカワ文庫 NV シ 25-1)

深海のYrr 〈上〉 (ハヤカワ文庫 NV シ 25-1)

深海のYrr 〈中〉  (ハヤカワ文庫 NV シ 25-2)

深海のYrr 〈中〉 (ハヤカワ文庫 NV シ 25-2)

深海のYrr 〈下〉  (ハヤカワ文庫 NV シ 25-3)

深海のYrr 〈下〉 (ハヤカワ文庫 NV シ 25-3)


 フランク・シェッツィング というドイツの作家の作品で、向こうでは200万部の大ヒットだったそと言う小説です。本屋で見かけた時から気になっていたのですが、ようやく読む事ができました。
 ある日、魚や鯨やクラゲが人を襲い、海底には謎のゴカイ(釣りの餌に使う生き物)が大量発生。更に大津波や疫病の発生など、人類の滅亡が迫る中、科学者達が原因を追い求めていくという話です。


 海洋ミステリーとか案内されていますが、海洋もののSFと言うのが良いでしょう。それも極上のハードSF。DNAやメタンハイドレートの科学的な構造、海流の話などの説明が多く、これらを聞いて眠くなる方には向きません。Amazon の評価が低いのは、それが原因かもしれません。
 でも好きな人には、肉汁たっぷりの高級ステーキのような小説です。ページ数も多いので、極厚高級ステーキでしょうか。ヘリコプターや海上石油プラントの説明から、津波の描写まで、知識欲を満たしてくれつつ、でも読むのが疲れないレベルで、大満足のバランスでした。例えるなら、トム・クランシーのSF版という感じです。もっとも、リアリティーのある津波のシーンは、最近何度となく見たニュースの映像と被ってしまい、楽しめはしませんでしたが…。
 欠点を挙げるとすると、登場人物が多すぎる事と、終盤に話を詰め込み過ぎている所でしょうか。それでも十分面白い作品で、上中下3冊合わせて、一週間くらいで読んでしまい、お気に入りの作家が増えた嬉しい読書になりました (^^)


 ちなみに、映画化の話もあります。Wikipedia(英語版)によると、公開予定は2015年。とても2時間に収まる話とは思えませんが、この分野の金字塔、「アビス」を目指し、良い作品を作って欲しいものです。